国内企業が世界でも活躍中の耐火物業界。市場規模や成長性は?
「耐火物(たいかぶつ)」って知っていますか?
聞きなれない言葉かもしれませんが、実は日本の産業を支える影の主役として、私たちの暮らしになくてはならない重要なもの。
その名前の通り、高い温度でも問題なく使用できる素材で、1,000度を超える高温にも形を変えず耐えることができます。予めれんが状や円柱状に成形されている定形耐火物と、粉状や練り土状の不定形耐火物などに分けられ、様々なシーンで用いられています。
耐火物ってどんな時に必要なの?
例えばビルや橋、船などに不可欠な鉄を作る時。鉄の材料となる鉄鉱石を溶かすには約1,500度以上の環境が必要になるので、鉄製の溶鉱炉でそのまま加熱すると、高温により炉もろとも溶けだしてしまいます。そこでれんが状の耐火物を溶鉱炉の内側に張ることで炉を守り、加熱から冷却を経て、鉄を作っています。


このように、鉄鋼、ガラス、セメント、セラミックス、アルミ、銅などの多岐に渡る素材の製造工程で耐火物が用いられており、それらの素材は自動車やスマートフォン、ビルなどの建造物、半導体とあらゆる製品に使用されています。
まさに耐火物なくして、現代の生活は成り立たないのです。
世界の耐火物市場動向と業界の主要プレーヤー
耐火物業界広報資料(耐火物協会・耐火物技術協会)によると、日本国内の耐火物消費量は年間約120万トンで、その約80%が鉄鋼業界で使用されています。また世界に目を向けると、新興国の経済成長に伴い、世界の鉄鋼需要は2020年の18億トンから、2050年には27億トンに増加すると予測されており、耐火物の市場規模は継続的な成長が見込まれています。
世界の大手耐火物メーカーとしては、RHI-Magnesita社やVesuvius社に加えて、黒崎播磨株式会社、品川リフラクトリーズ株式会社と、日本のメーカーも世界の第一線で活躍中。
世界でも高いシェアを誇る品川リフラクトリーズの「耐火物事業」では、1997年の中国進出を皮切りに、オーストラリア、ニュージーランド、米国、インドネシア、ブラジルの7カ国に生産拠点を展開。「断熱材事業」では、マレーシア、台湾、中国、「先端機材事業」では米国に生産拠点を展開し、2030年までに海外売上比率50%を目指し、海外展開に力を入れています。

世界の第一線で活躍できる耐火物業界
今回は耐火物業界について、簡単に概要をお伝えしました。
国内の耐火物メーカーは世界的に見ても高い技術力を持っており、世界の第一線で活躍できる環境があります。また、世界的な温室効果ガス削減の流れから、今後はよりチャレンジングなソリューション、研究開発が求められている業界でもあります。
普段はあまり触れる機会がない耐火物かもしれませんが、その技術や業界の魅力が少しでも伝わると嬉しいです。
今後もこちらのコラムでは、業界や耐火物にまつわるコラムをお届けしますので、ぜひチェックしてくださいね。
参考文献:
耐火物協会、耐火物技術協会「耐火物業界広報資料」
https://www.tarj.org/wysiwyg/file/download/1/5585 (2024年10月29日閲覧)