宿場町と品川白煉瓦の歴史に触れる旧東海道沿いの喫茶店「Kaido books & coffee」
耐火物の製造、販売を主力事業としている品川リフラクトリーズ株式会社。
その歴史は、1875年に西村勝三が創業した小さな工場から始まりました。品川白煉瓦と名乗り始めたのは1887年で、程なくして品川白煉瓦株式会社を創立。その後、約100年後の2009年にJFE炉材株式会社と合併するまで、品川白煉瓦株式会社という名前が広く知られることとなります。
一方、古くから交通の要衝として栄え、大勢の人々が行き交っていた品川。
江戸時代に設置された東海道五十三次「品川宿」は、西日本から江戸に入る際には最後の休憩地であり、全国の人やもの、情報が集まる大変にぎやかな場所でした。明治時代には日本初となる鉄道が開通し、品川浦の埋め立ても進みました。工業用地として優れた立地であったことから、現在にも繋がる多くの近代産業が発展していきました。
そんな品川白煉瓦と品川の関係は、西村が1887年に現在の東京都品川区北品川にあった官営の品川硝子製造所の払い下げを受け、当時深川にあった耐火れんが製造工場である「伊勢勝白煉瓦製造所」を品川に移転したことから始まります。「伊勢勝白煉瓦製造所」という名称は、当時の西村の通称であった「伊勢勝」にちなんだものでしたが、品川への移転を機に「品川白煉瓦製造所」と改称し、「品川白煉瓦」としての歴史を歩み始めました。
拠点を品川に移してからの西村は、技術の開拓と原料地の開発をますます盛んに行い、耐火れんが製造の技術を大きく進歩させることになりました。

歴史ある街のにぎわいを今に伝えるユニークな古書店喫茶「Kaido books & coffee」と品川リフラクトリーズ
品川リフラクトリーズと「品川の地」のゆかりを現在でも感じられるお店があります。そのお店の名前は「Kaido books & coffee」。元々品川地域のプロモーション活動を手がける会社を運営していた店長の佐藤さんが、プロモーション活動の一環として始めたユニークな古書店喫茶です。

「旅と街道」をコンセプトにしている「Kaido books & coffee」は、旧東海道沿いにある北品川商店街の中にあり、日本家屋風のレトロな佇まいのお店。お散歩の途中に、つい足を止めて中を覗いてみたくなるノスタルジックな雰囲気です。店内に入ると、1階のカウンターでは生クリームをふんだんに使用した生スコーンや、自家製ソーセージを挟んだホットドッグ等を販売しており、ちょっとした休憩やお昼ごはんにもぴったり。

2階に上がると目に飛び込んでくるのは、所狭しと並んだ膨大な数の書籍たち。こだわりのセレクトで全国各地の土地や文化、産業、歴史に関する古本が12,000冊ほど置かれ、全て自由に読むことができます。


Kaido books&coffeeで、オープン当初の2015年から人気商品としてお客様に愛されているのが「品川白煉瓦クッキー」。
れんがを模したハードタイプのクッキーは、1枚1枚手作りされています。こだわりポイントは、生地が膨らまないよう鉄板で挟み焼きをしていること。明治時代当時のれんがをイメージしたデザインの箱に詰めたクッキーセットは品川土産としても好評で、常に予約販売か入荷待ちの状態だとか。

品川白煉瓦クッキーを作り始めた経緯を店長の佐藤さんに伺いました。
佐藤さん「このカフェをオープンするにあたって、地域に根ざしたお店にしたいと思い、自治体や地元企業に協力をお願いしました。その中で、品川リフラクトリーズさんがキッチンの施工に協力して下さり、岡山工場から大量の耐火れんがを運んでくれたんです。その恩返しの意味も込めて、日本の近代化に大きく貢献した西村勝三さんの功績を広く伝えたいと思い、このクッキーを開発しました。」


店内カウンターにはSHINAGAWAの刻印が入った創業当時の白れんが(耐火れんが)や、現・品川リフラクトリーズが創業100周年を記念して発行した社史が飾られ、目に留めたお客様にも興味を持っていただけることが多いそうです。かつての旅人が集う茶屋のように、コーヒーを片手にゆったりとした時間が流れるなか、西村勝三の残した偉業が静かに語り継がれています。

SHOP DATA
Kaido Books&Coffee
東京都品川区北品川2-3-7 丸屋ビル103
営業時間 9:00-18:00 (月・火曜定休)
電話 03-6433-0906
インスタグラム
https://www.instagram.com/kaido_booksandcoffee/
品川白煉瓦クッキー
2個400円(税込)
1箱9個入り1,980円(税込)
※イートイン可
出典
品川宿の歴史 | 旧東海道品川宿周辺まちづくり協議会
品川白煉瓦株式会社(1976)『創業100年史 品川白煉瓦株式会社』